正司、十一

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正司?


シャブのない山の小休止はなんだか退屈だった。

正司と色々話をしている時に作った小さな雪だるまを持って、
その辺の木のあしもとに置いた。


『さて、シラフでトレッキングの続き行こか!?』

そう言って僕は頭に巻いたタオルを巻き直した。

『トレッキング?てなんスカ?』
正司が不思議そうに聞いてきた。

『トレッキング(笑)、パキパキの俺と正司が山で徘徊するのを
ケミカルトレッキングていうんや(笑)、そんな話をやな、最近...、』
笑いながら言う。
この時、思い出したように

『そうや!言うの忘れてた!俺最近ブログていうの始めてん、
シャブのろくでもない体験談を書いてるねん!』

そんなふうに少し興奮気味に言うと『へー、』と正司がぼくを見る。

『なんでまたブログなんですか?』
正司はあんまり興味ないのか?て雰囲気で質問してきた。

『俺の先輩のカズヤさんて話したの覚えてるか?ケンカで
ビール瓶で人の頭カチ割って、割れた瓶を別の敵に突き立てるていう、
鬼みたいな人(笑)で、仲間には優しい...ギャップの激しい...』

そう言うと、すぐに思い出したようで

『あー、禰彌さんにシャブ教えた人!まだ先輩らと交流あるんですね!
良かったです。禰彌さんがやたら頻繁に俺にばっかり連絡してくるから、
禰彌さんて友達は俺しかおらんのかと思ってました(笑)』

笑いながらさりげなくヒドイことを言う。

『いや、まぁ友達は少ないけど
...ポン中時代は正司にしか連絡してなかったけど、
逮捕されたあと、十年ぶりに先輩らに連絡したんや...。』


...半分凍りついた雪が積もった山道を歩きながら話す。
夜明けの山にはまだ人の姿はなく、我々が新雪の道を行く。

社会から落ちぶれてシャブに溺れたまま結婚してすぐに子供が産まれた。
夢が潰(つい)えて人生に挫折した僕は、行き先を見失い
『最果て』の行き止まりで絶望した。

産まれたばかりの息子と嫁さんと僕、小さな温かい家族。

僕は生きることも死ぬことも出来ない腰抜けだった。
かけがえのない小さな家族に支えられ、見えない未来を闇雲に探した。


初めてこの山に訪れた冬の朝、野生のリスが走っているのを
見つけたことが嬉しく、その日からというもの、シャブで発奮
し過ぎてパキパキをもて余した時は、昼夜を問わず一人山に行き
『何か』を探すようになった。


それだけが未来に見えた。

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