正司、十二

| コメント(0) | トラックバック(0)

小休止を終えたあと、今度は渓流にむかって行く。


雪の積もった坂道を下ると渓流沿いのみちに行き当たる。
正司と僕は渓流を上流に向けて歩く。

懐かしい。
シャブがないのが残念で仕方ない。
僕がシャブ体験を綴ったブログを書いてると正司に話した。


『...そのカズヤさんがな、俺に文章を書くように勧めてくれてな
...で、俺らが山を徘徊してた話をカズヤさんが 薬物=ケミカルで
"ケミカルトレッキング"やな、て名付けたんや(笑)』

『...俺ら?て、なんですか?』
ハッとしたように正司が言う(笑)。

『言うの忘れてたわ(笑)、正司もそのブログに登場するんやわ、
お前をモデルにしたキャラクターが。
俺にシャブをたかる後輩として(笑)』
そんなふうに笑いながら言うと、正司は目を丸くした(笑)。

『ひ、ひでぇ!ウソっぱちや!なんで俺がシャブをたかるんスカ!?』
マジで焦った顔をする正司。

『ウソ嘘、ちゃんと誇れる後輩やで(笑)』


風は冷たいが、完全防寒で山を歩いているため額に汗をかく。
シャブをしているわけじゃないのにシャブ中みたいだ。

さっきの広場から一キロほど下った林道は渓流沿いの
別の林道と橋を跨いで合流する。
この林道の行き着く先の名前は
『ポンポン山』という(笑)。
ポン中全開のときに、一度はポンポン山の山頂にも行った、
勿論『ポン』中だから、『ポンポン』山の山頂を目指すのだ。
(注、地元や北摂地域のハイカーがよくハイキングで登る山です)

『また良かったらブログ読んでや(笑)』
坂を登り、真冬だというのに汗だくになりながら正司に言った。

『禰彌さん、もうシャブはやらないのですか?』
正司も息がきれるらしくハアハア言う。
夏場ならなんてことない低い山だが、冬場で雪が足首まで積もり、
時々滑ったりもする。

『シャブの体験ブログみたいに寒いもん書いてる間はな。
しないと思う、子供らが巣だった後に老後の楽しみに置いておくわ。』


正司は眼鏡を外し、その曇りをとる。
ここはポンポン山へ行くまでにある眼鏡橋と呼ばれる広場で、
林業用の車だとこのあたりまで登ってくる。

眼鏡橋の上で僕はリュックからカセットボンベとコンロを取りだし
二人分のコーヒーを作ることにした。


シャブの無い山は何故か寂しく、あれだけ好きだった山の静寂に
不気味さを感じたりもする。

僕はシャブの幻覚に踊らされて、山を居心地が良い場所だと
思っていたのか?

『正司、...もし、な将来何か思うことがあって、
俺がまたシャブ持って最後のケミカルトレッキングに行きたいって
言うたら、一緒に行ってくれるか?』

いつまでもこうして穏やかな気持ちで過ごしたい。
だけどあの覚醒剤が魅せてくれた狂える時代のような時間を、
最後にもう一度過ごせないか?と思った。


『いいですよ、禰彌さんが最後のケミカルトレッキングをするって
いうときは連絡ください。お供します♪』


俺が書いたブログにはな、正司と俺が共有した人生の時間を
俺なりに書いたんや、
あと昔のはなしとかな。

正司、良かったら暇なときにでも、ブログ読んでくれ。

タイトルはな

『愛と幻想の薬物』っていう名前やねん。


おわり。


トラックバック(0)

トラックバックURL: http://svahadevie.com/mt/mt-tb.cgi/545

コメントする

最近のブログ記事

Powered by Movable Type 5.2.13